2015年10月5日月曜日

「面接」と「読み聞かせ」

「面接」が苦手、あるいは苦手という自覚はなくとも、なかなか思うような結果に結び付かないという人に毎年出会います。様々な状況、様々な形態がある面接を事前に「エアー」で対策するのはなかなか難しいものです。一連の流れや「型」を知ることができても、実際に話をする具体的な内容はすぐに準備できるわけではありませんし、なにより緊張する中で「自己をアピール」していくことは大きな負荷がかかります。日常生活で、「舞台」を踏む経験を積んでいる人は、その経験が自分を支えてくれるかも知れません。でも、それを持たない、経験が少ない人も多くいます。

そんなわけで学生たちは、私(や友人)を相手に、面接の練習をすることになるわけです。そういった折に、私がいつも思うことは、面接で意識を払うポイントについて、
  〈面接で自己をアピールすること=本当の自分を知ってもらうこと〉
と考えている人が意外に多いことです。また一方、面接にはそこで話される「内容」があります。志望理由を教えてください、あなたはこのような場合どう行動しますか?、最近ニュースになった出来事で一番関心のあることを教えてください…etc。これらの問いに対する
  〈正しい答えを探る〉
このことに皆、頭を悩ませることが多いように感じます。


 短い時間の中で、「本当の私」をアピールすること、「正しい答え」を追求すること、こんな無理のある努力は、(誤解を恐れずに言うならば)私はしないほうが良いと思います。自分を知って貰う努力をするな、ウソをつけ、というのではありません。「その場において」必要な・魅力ある自分、「その場にとって」正しい答え、 について考えてみたい、というわけなのです。

自分の中にある答えを間違いなく相手に伝達しようとする努力は、一方で相手が置き去りにされる危険と背中合わせです。面接で追求すべきは、「正解を伝えること」以上に、それを伝えたことによって「自分と相手の関係性がより良い方向に更新されること」だと私は思います。正解を言えたとしても、面接的にはアウト、は、やはりあり得るわけです。

相手意識、といってしまえば簡単ですが、それをどのように持ったら、どのように表出したらよいのか、答えは私にもありません。方法としてそれを言語化したとたんに、すでにそれは面接での「今ここ」でなくなってしまうような気がします。したがって、なんとか相手意識が働く思考の活動を辿る場を設定したいと思うわけですが…。私が今、可能性をを感じているものの一つに「読み聞かせ」があります。子どもに楽しく聞いて貰うために、もっと読んで欲しいという気持ちになって貰うために、私たちが考える身ごなしは、面接において「今、この場を作る」発想と重なる気がします。照れくさい自己開示や読むべき内容を間違えずに、というハードルを越えて、「あなたの話を聞いて良かった」「もっと聞いてみたい」と相手に感じて貰うために。

とくに男子学生は、読み聞かせと聞くと「げげっ」という反応をする人もおおいのですが、さて、効果の程は、如何に。

◯本日の読み聞かせ:トミー・アンゲラ―さく いまえ よしとも やく『すてきな三にんぐみ』

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